ベテランも意外と知らない基本操作、レイヤー周りの豆知識達を9個紹介していきます。
前半はレイヤーパレットの操作と選択範囲について、後半は色調補正レイヤーについてです。地味な内容ですが、初心者からベテランまで、レベルに関係無く重要な知識なのでぜひご覧ください。
この記事の目次
1 レイヤーパレットの操作 [手のひら]ツールが便利
レイヤーパレットにレイヤーがたくさんあると、マウスでスクロールしたり、ペンでバーを動かしたりしなきゃいけなくて大変です。
実はレイヤーパレットは、[Space]キーを押して出てくる[手ツール]で動かすことが出来ます。
レイヤーパレットの広いオレンジの部分を[手のひら]ツールでドラッグするだけで良いので、ペンをマウスに持ち替えてホイールでスクロールしたり、細いバーをペンで慎重につまんで動かす必要はもうありません。
2キャンバスからレイヤーを探す。
画面上のレイヤーがどこにあるのか探したい時は、[Ctrl]と[Shift]を一緒に押すと出てくる[レイヤー選択ツール]で、キャンパスの探している部分を囲うと、このようにすぐ見つけることが出来ます。
このツールはキャンパスのゴミ探しにも便利です。
3レイヤーを一枚だけ表示する
一つのレイヤーやフォルダだけを表示させたい時、レイヤーパレットの目のマークを、[Alt]を押しながらクリックすると、このようにそのレイヤーだけを表示する事が出来ます。
戻す時はまた同じように目のマークを[Alt]クリックします。
4画面表示に関するツールへの切り替え
レイヤーパレットとは直接関係ないのですが、他に表示に関して知っておきたいツールを紹介します。
[Space]キーを押している間、一時的に[手ツール]に切り替わり、画面をドラッグできます。
左右のバランスが狂っていないかを確認する時によく使います。 [表示]メニューの[回転・反転]の[回転・反転のリセット]もショートカットに登録しておくと便利です。回転や反転したキャンバスをワンタッチで元に戻す事ができます。
これらのツールの一時的な切り替えは、描いている箇所からペンや視点を動かさずに済むので、画面操作の度に気が散らないのでオススメです。
レイヤーパレットについての補足です。レイヤーパレットとモニター解像度についてです。
上の画像がFHD1920×1080のモニターの画面、下の画像がWQHD(2K) 2560×1440のモニターの画面です。キャンパスのズームはどちらも同じ状態での比較です。
レイヤーパレットやキャンパスの表示領域の大きさの違いに注目してください。
WQHDの方が画面に表示できるものが大きいので、レイヤーパレットを動かしたり、キャンパスをズームしたり移動する回数が少なくて済みます。
なので、もし経済的に余裕があったら、WQHDや4Kのモニターや液晶タブレットをオススメしておきます
5レイヤーと選択範囲
レイヤーから選択範囲を作る方法をいくつかご紹介します。
これらは、場合によっては自動選択ツールを使うより、早く選択範囲を作る事ができるので、トーン貼ったり、マスクを作ったりするときに時短になるので使ってみてください。
レイヤーパレットのサムネイルを[Ctrl]を押しながらクリックすると、そのレイヤーに描かれている部分を選択することが出来ます。
さらに[Ctrl]と[Shift]を押しながら、別のレイヤーのサムネイルをクリックすると、
元のレイヤーの選択範囲に別のレイヤーの選択範囲を加える事が出来ます。
また、[Ctrl]と[Alt]を押しながら、別のレイヤーのサムネイルをクリックすると、
元のレイヤーの選択範囲から別のレイヤーの選択範囲を消す事が出来ます。
少し分かりにくいですが、[Ctrl]と[Shift]と[Alt]を押しながら、レイヤーのサムネイルをクリックすると、元の選択範囲と、そのレイヤーと共有する部分が選択されます。
補足すると、これはクッキーの生地の型抜きみたいな感じで、もとの選択範囲から、クリックしたレイヤーの形に切り抜く機能です。
クリックしたレイヤー以外の選択範囲を消してくれる機能とも言えます。ここでは元の選択範囲から、黒のレイヤーとの共通部分以外の選択範囲を消去しています。
また別のレイヤーを同じように[Ctrl]+[Shift]+[Alt]クリックすると、さらに共有部分だけを選択することが出来ます。
ここでは元の選択範囲から、赤のレイヤーとの共通部分以外の選択範囲を消去しています。
ベタ塗りレイヤーやグラデーションレイヤーから選択範囲をする時は、レイヤーじゃなくて、レイヤーマスクのサムネイルをクリックなので注意です。
6ベタ塗り・グラデーションレイヤーの色変更
ベタ塗りレイヤーと1~2色のグラデーションレイヤーの色は、レイヤーを選択しながらオブジェクトツールで、カラースライダーをいじると変更できます。いちいち編集で色調補正をする必要が無いので、便利です。
7マスク・定規のコピー
マスクを[Alt]を押しながら他のレイヤーにドラッグ&ドロップするとこのように、同じマスクをコピーする事が出来ます。何回も選択範囲作ったりしなくて良いので便利です。
レイヤーが同士が近くにあるなら、クリッピングでも似た結果が得られます。
レイヤー達を同じフォルダーに入れて、フォルダにマスクをかけても同じ結果が得られます。
マスクだけじゃなくて定規も[Alt]ドラッグで同じようにコピー出来ます。
また、レイヤー達を同じフォルダーに入れて、フォルダーに定規を付けたら、フォルダー内全てのレイヤーに定規が適用されるようになります。これは漫画の背景を描くときに便利です。
8境界効果「フチ」をイラスト仕上げに使う
次はレイヤーの境界効果のフチについてです。今回はイラストでの使い方の一例を紹介します。フォルダーに入ったイラストにフチをつけると、外形線がクッキリして、見やすく出来ます。
ちなみに、今回はフチをつけた後、手やヘッドフォン、上着の襟などの線を、外形線のフチの太さと揃えるようにペンで加筆しています。上の画像は加筆後のものです。フチをつけるのはボタンひとつで出来て簡単ですが、加筆無しだと線の太さがバラバラで見栄えが悪くなるので、このような微調整には手を抜くべきではありません。
イラストのフォルダを、もう一回フォルダに入れて、フォルダにフチをつけると、フチを二重に出来ます。ここでは、元の黒い外形線の外側に白いフチをつけています。
さらにイラストのフォルダを、もう一回フォルダに入れて、フォルダにフチをつけると、フチを三重に出来ます。今回は全体的にポップでかわいい感じにしたいので、ピンク色のフチをつけました。フチの色はレイヤープロパティパレットの[フチの色]から変更することが出来ます。
キャラが背景に埋没していると感じた時に、ちょっとだけ黒いフチでクッキリさせたり、白フチでハッキリさせたりすると、お手軽に良い感じになるので、ぜひ試してみて下さい。
ただし外形線と元の線画との差異に注意して、必要なら加筆・調整を行ってください。
9色調補正レイヤーの使い方
ここではまず、[色調補正レイヤー]の[カラーバランス]を作成してみます。
[カラーバランス]のスライダーは、このようにCMY(シアン、マゼンタ、イエロー)、RGB(レッド、グリーン、ブルー)、に分かれていて、それぞれ寒色と暖色どちらに寄せるかを選ぶことが出来ます。
また、シャドウ・中間色・ハイライト、それぞれの明るさで、別々にカラーバランスを変える事が出来ます。無彩色であっても、色をつけることが出来る点が[色相・彩度・明度]の色調補正と異なる点です。よく使われるのは、シャドウを寒色寄りに・ハイライトを暖色寄りにする調整です。
では、シャドウから試してみましょう。
まずは一番上のシアン・レッドのスライダーを動かすとこのようになります。影の色の成分がレッド寄り、シアン寄りに変化しています。
次は二列目のマゼンタ・グリーンのスライダーを動かすとこのようになります。
影の色の成分がマゼンタ寄り、グリーン寄りに変化しています。
次は三列目のイエロー・ブルーのスライダーを動かすとこのようになります。
影の色の成分がイエロー寄り、ブルー寄りに変化しています。
それでは実際にイラストのカラーバランスを調整してみます。
シャドウは、イラスト全体をピンクがかった感じにしたいので、マゼンタを強めにしました。
中間色は、ハイライトをイエロー寄りにしたいので、それを強調するために、補色のブルーを強くしました。
ハイライトは、全て暖色寄りにして、レッドとイエローを少し強めにして、肌色を強調しました。
くすんだ色が鮮やかになっているのがわかると思います。
特に厚塗りなどで筆を重ねていくと、色が濁ってくるので、その調整に便利だと思います。
色調補正をもう一度やり直したい時は、レイヤーパレットの[色調補正レイヤー]のサムネイルをダブルクリックすると、またウィンドウが出てきて、再編集することが出来ます。
次は[色調補正レイヤー]の[色相・彩度・明度]で色相を変えて、別のカラーバリエーションを作ってみましょう。
しかしこのままでは、肌の色も変わってしまうので、肌の部分だけ[色調補正レイヤー]にマスクを作っていきます。
肌のレイヤーを選択して、肌レイヤーの選択範囲から服などのパーツのレイヤーを、[Ctrl][Alt]サムネイルクリックで引き算していって、肌が見えている部分だけの選択範囲を作ります。下の画像のように、青色の選択範囲から、緑色のレイヤーの部分を消去する感じです。
肌の部分だけ[色相・彩度・明度]の[色調補正レイヤー]をマスクしたのがコチラです。
これでカラーバリエーションを簡単に作る事が出来ます。
このように、色調補正レイヤーはマスクをすることで、部分的に使うことが出来るので、
こんな感じで、褐色肌の差分も色調補正レイヤー一枚で一瞬で作ることができます。
色調補正レイヤーは、背景の微調整にも便利です。
今回は色彩空気遠近法への活用を実践してみます。
前準備として、近景・中景・遠景で選択範囲を分けておきます。
境界が曖昧な場合は、不透明度が使える、[クイックマスク]や[選択範囲レイヤー]が便利です。
終わりに
今回は地味なテクニックばかりだったと思いますが、このような描く以外の部分で、完成させる早さに差が出てきます。少しずつで良いので、使ってみて覚えていって下さい。